
MACDクロスは本当に有効?
MACDは「Moving Average Convergence Divergence」の略で直訳すると「移動平均・収束・拡散」です。
大人気の指標で、2本の指数平滑移動平均線(EMA)同士の距離が縮まる(収束)か広がる(拡散)かに焦点を当てたテクニカル指標で、トレンド系の指標とオシレーター系の指標両方の特性をあわせ持ちます。
HUNTER×HUNTERでいうとヒソカみたいなテクニカル指標です。
また、指数平滑移動平均線(EMA)を用いているので直近の価格に比重をおいており、MACD一つで色々なことが見られる良いとこどりの指標でもあります。
MACDというと、短期EMAと長期EMAの差を表すMACD線、MACD線の移動平均を表すシグナル線の2本が表示されています。
今回はMACD線とシグナル線のクロス手法を検証していきます。
※いわゆるMACDのゴールデンクロス・デッドクロスや、MACDのゼロラインクロス。
すぐにトレード活かせる内容なので、ぜひ目を通してみてください。
- 根拠のあるトレードしたい方。
- 一時的な手法ではなく長期で使えるトレードをしたい方。
- FXがギャンブルではないと理解できている方。
- すぐにトレードに活かせる実用性の高い情報が欲しい方。
- データに基づいた事実ベースの情報が欲しい方。
MACDクロスは有効です


結論から申しますと、MACDクロスは有効です。
上記画像は、過去22年間ひたすらMACDクロス手法を行い続けるようにプログラムしてテストした場合の資産推移です。
見ての通り右肩上がりの資産曲線です。
客観的にこの画像を見て、MACDのクロスが全くの無意味と言う人は少ないでしょう。
ただし、使う時間足とパラメータによりけりで、全く優位性が無かったMACDの期間設定は多いです。
仮にあなたがどこかで見た設定等を鵜呑みにし、手法に優位性が無いと知らないまま稼げると信じてトレードし続けた場合どうなるでしょうか?
この記事ではそれぞれの時間足で検証し、期待値が高かったパラメータも含めて公開します。



MACDによるクロス手法には優位性があります。
MACDクロスの検証方法
MACD線がシグナル線を上抜けor下抜けたらロングorショート(買いor売り)
エントリー後、MACD線がシグナル線を下抜けor上抜けたらクローズ(決済)。
それぞれの時間足、良く使用されるパラメータと個人的に設定したパラメータのMACDでテストを行い、計560パターンのデータを取ります。
期間6、12、24、48の短期EMAと期間13、26、52、104の長期EMAの組み合わせが13パターン、シグナル線の計算期間が4、9、18、36の4パターンでそれぞれ決済する組み合わせが52パターン。
これを1分足~日足で行い、計364パターンとなります。
通貨ペアはドル円、期間は2003年6月~2023年11月です。
取引コストは検証用に0.1pips(0.1銭)です。
※優位性がマスキングされてしまうことを防ぐため、スプレッドを低めに設定しています。
手法そのものの力だけを見たいため利確損切りは設定しません。(一応500pipsで設定)



早速やっていきましょう!
MACDクロスの優位性、検証結果
次項に出てくる棒グラフが検証結果です。
過去20年間のチャートデータをもとに、MACDクロス手法の期待値(pips)を表したグラフです。
縦軸は期待値(pips)です。勝ち負け平均して1トレード毎に何pips期待できるかを表しています。上側に棒グラフが伸びていれば期待値プラスです。
横軸は、MACDの短期EMAと長期EMAの「期間の組み合わせ」です。横軸の数字に近い棒グラフは全て同じEMAの組み合わせ同士での結果です。
最後に棒グラフの色は、MACDのシグナル線の期間を表しています。
「6~26」とあれば期間6の短期EMAが期間26の長期EMAを下から上抜けたら買いエントリーをして、逆に期間26の長期EMAを期間6の短期EMAが上から下抜けたら決済をした時の結果を表します。
売りの場合はエントリーと決済が真逆です。
※あまりにもトレード回数が少なかったものは除外していることがあります。
※見にくいため棒グラフが上下側に伸びているの時や、上側に伸びている時でもトレード数が少な過ぎる場合のグラフを切っていることがあります。
1分足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、1分足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
全ての組み合わせで期待値マイナス!
棒グラフが全て下側に伸びています。
今回検証したすべての組み合わせでは優位性は感じられませんでした。



もしこのままトレードしていたらと思うとゾッとします。
1分足で、期待値がプラスになった組み合わせは無し。
最も悪かったものは期間6の短期EMA、期間26の長期EMA、期間4のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合。
5分足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、5分足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
全ての組み合わせで期待値マイナス!
1分足と同様、今回検証したすべての組み合わせで期待値がマイナスの結果に。
優位性は感じられませんでした。



もしこのままトレードしていたらと思うとゾッとします(2回目)
5分足で、期待値がプラスになった組み合わせは無し。
最も悪かったものは期間48の短期EMA、期間104の長期EMA、期間36のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合。
15分足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、15分足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
全ての組み合わせで期待値マイナス!
1分足、5分足と同様、今回検証したすべての組み合わせで期待値がマイナスの結果に。
優位性は感じられませんでした。



もしこのままトレードしていたらと思うとゾッとします(3回目)
15分足で、期待値がプラスになった組み合わせは無し。
最も悪かったものは期間12の短期EMA、期間104の長期EMA、期間18のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合。
30分足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、30分足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
シグナル線の期間がMACDのデフォルト設定である「9」の6倍に相当する「36」の場合のみ期待値がプラスになっている場合がちらほら。
他は絶望的です。



30分足でやっと少しばかり光が見えてきましたね。
30分足で最も期待値が高かったMACDクロス設定の資産推移


MACDクロス(30分足) | パラメーター |
---|---|
短期 EMAの期間 | 24 |
長期 EMAの期間 | 104 |
シグナル線の期間 | 36 |
30分足足で最も期待値が高かった設定です。
短期EMA24期間、長期EMA104期間、シグナル線36期間のクロスでエントリー決済した場合の資産推移です。
中期足の割には横這いなので優位性を少し感じます……と言いたいところですが、ブレが大きいので何とも言えません。
一時期急激に資産が増えている時期があるので相場とマッチした時はかなり有効かもしれません。



30分足では他の期待値プラス設定の資産推移もこんな感じで似たような波形でした。
30分足で、期待値がプラスになった組み合わせは期間24の短期EMA、期間104の長期EMA、期間36のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合です。
最も悪かったものは期間12の短期EMA、期間13の長期EMA、期間36のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合。
1時間足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、1時間足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
全体的にEMAやシグナル線の期間が長めなほど期待値がプラスの傾向がありますね。
対してシグナル線の期間が4のパターンは全て期待値マイナスの結果です。



優位性がある感じがします!
1時間足で最も期待値が高かったMACDクロス設定の資産推移


MACDクロス(1時間足) | パラメーター |
---|---|
短期 EMAの期間 | 24 |
長期 EMAの期間 | 104 |
シグナル線の期間 | 18 |
1時間足で最も期待値が高かった設定です。
短期EMA24期間、長期EMA104期間、シグナル線18期間のクロスでエントリー決済した場合の資産推移です。
30分足のシグナル線の期間だけ1/2された値です。
30分足と同様に長期足の割には横這い気味なので優位性を少し感じます。
またこちらも同様に一時期急激に資産が増えている時期があるので相場とマッチした時はかなり有効かもしれません。



1時間足では他の期待値プラス設定の資産推移もこんな感じで似たような波形でした。
1時間足で、期待値がプラスになった組み合わせは期間24の短期EMA、期間104の長期EMA、期間18のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合です。
最も悪かったものは期間6の短期EMA、期間52の長期EMA、期間4のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合。
4時間足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、4時間足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
1時間足に続き期待値がプラスの棒グラフが割とあります。
期待値がプラスになっている組み合わせは1時間足とは逆で全体的にEMAやシグナル線の期間が長めなほど期待値がプラスの傾向がありますね。
ただし、トレード数がやや少ないものが多いのであまり参考にならないかもしれません。



優位性の存在をある程度感じます
4時間足で最も期待値が高かったMACDクロス設定の資産推移


MACDクロス(4時間足) | パラメーター |
---|---|
短期 EMAの期間 | 6 |
長期 EMAの期間 | 52 |
シグナル線の期間 | 4 |
4時間足で最も期待値が高かった設定です。
短期EMA6期間、長期EMA52期間、シグナル線4期間のクロスでエントリー決済した場合の資産推移です。
30分足、1時間足と同様、長期足の割には横這いなので優位性を少し感じます。
こちらも同じコメントになりますが一時期急激に資産が増えている時期があるので相場とマッチした時はかなり有効かもしれません。



4時間足では他の期待値プラス設定の資産推移もこんな感じで似たような波形でした。
4時間足で、期待値がプラスになった組み合わせは期間6の短期EMA、期間52の長期EMA、期間4のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合です。
最も悪かったものは期間48の短期EMA、期間104の長期EMA、期間36のシグナル線の組み合わせでエントリー決済した場合。
日足における各MACDクロスの期待値


こちらは20年間、日足のMACDでクロス手法を行い続けた結果です。
全体的に期待値がプラスになっている組み合わせがあるように見えますが、全ての組み合わせで取引回数が少なすぎたので、参考にならないかもしれません。
波形も全くきれいではなかったです。



コメントは特になしです。
日足は、良かった設定も悪かった設定も取引回数が少なすぎるため参考にならないかもしれません。
MACDクロスは中・長期足で有効
MACDクロスの手法は30分足~4時間足で有効。
検証の結果、MACDクロスは有効な戦略であることが分かりました。
また、短期足では使いにくいように感じました。



4時間足が比較的グラフの形もきれいでした。
損切りと利確を設定してみた


オマケです。
期待値がプラスだったMACDクロス設定の組み合わせのうちの1つに利確と損切りを設定してみました。
今回設定してみたのは、4時間足、期間6の短期EMA、期間52の長期EMA、期間4のシグナル線のMACDクロス。
利益確定が500pips(ほぼ無し)は検証時のまま、損切りが50pipsです。
トレーリングストップ等は入れず利確損切りのみの設定。
かなりシンプルな手法ですが、右肩上がりの資産推移となりました。
本記事の検証は2003年から2023年でやってましたが、今回は直近の2025年9月まで期間をのばしてテストしてみました。だから20年ではなく22年です。
検証用にスプレッド条件を緩めに設定しているためこのままでは少し使いづらいですが、他のテクニカル分析やファンダメンタルズ分析等と組み合わせることで十分力を発揮できそうです。
もちろん所詮過去の値動きに過ぎないですが、「今までずっと通用してきた手法」と「誰かが稼げると言っているだけで短期間だったりと裏付けが乏しい手法」どちらを使いたいかと言われれば前者だと思います。



エントリーする際の根拠の1つとして使ってみると良いかもしれません。
MACDクロスの設定表
表にもしてみました。
期待値がプラスだったものが「〇」。
最大の期待値だったペアが「赤色」のマス。
空欄のマスが期待値マイナス。
最小の期待値だったものが「青色」のマスです。
トレード数が少なくて参考にならないと思われるものが「ー」のマスです。



自分の良く使う設定と表とを見比べてみてください。
「30分足」MACDクロスの設定表
30分足 | 4 | 9 | 18 | 36 |
---|---|---|---|---|
6~13 | ||||
6~26 | ||||
6~52 | ||||
6~104 | ||||
12~13 | ||||
12~26 | ||||
12~52 | ||||
12~104 | ||||
24~26 | ||||
24~52 | ||||
24~104 | ||||
48~52 | ||||
48~104 |
「1時間足」MACDクロスの設定表
1時間足 | 4 | 9 | 18 | 36 |
---|---|---|---|---|
6~13 | ||||
6~26 | ||||
6~52 | ||||
6~104 | ||||
12~13 | ||||
12~26 | ||||
12~52 | ||||
12~104 | ||||
24~26 | ||||
24~52 | ||||
24~104 | ||||
48~52 | ||||
48~104 |
「4時間足」MACDクロスの設定表
4時間足 | 4 | 9 | 18 | 36 |
---|---|---|---|---|
6~13 | ||||
6~26 | ||||
6~52 | ||||
6~104 | ||||
12~13 | ||||
12~26 | ||||
12~52 | ||||
12~104 | ||||
24~26 | ||||
24~52 | ||||
24~104 | ||||
48~52 | ||||
48~104 |
まとめ:MACDクロスの設定表は有効な手法です。


今回のおさらいです。
MACDクロスの設定表は有効な戦略。
・30分足~4時間足等で有効。
・短期足ではあまり優位性は見られない。
いかがでしたか?
MACDクロスを検証してみました。
結果、手法の優位性が確認できました。



期待値が大きい組み合わせでエントリーを狙ったり、逆に期待値マイナスの組み合わせが起きていないか確認してみるとトレードの質向上につながると思います。