ストキャスティクスは本当に使える?
ストキャスティクスはアメリカのテクニカルアナリスト、ジョージ・レーンによって開発されたテクニカル指標です。
売られ過ぎ・買われ過ぎを判断するオシレーター系の指標で、ストキャスティクス(Stochastics)を訳すと推計学・確率論的なというような意味。
文字通り、一部を見て全体像を把握する推計統計学をインジケーターにしたものです。
選挙等の出口調査が身近でしょうか。
人気のテクニカル指標ですが、本当にストキャスティクスは有効なのでしょうか?
有効であるならば、どのくらいの期待値があるのでしょう?
そこで今回は、ストキャスティクス逆張り手法をプログラミングを用いて20年以上の期間で検証しました。
今回は「ファストストキャスティクス」で使われる%Kで検証を行います。
ものによっては、期待値がマイナス数百pipsの絶対に手を出したくない組み合わせも存在しました。
すぐにトレード活かせる内容なので、ぜひ目を通してみてください。
- 根拠のあるトレードしたい方。
- 一時的な手法ではなく長期で使えるトレードをしたい方。
- FXがギャンブルではないと理解できている方。
- すぐにトレードに活かせる実用性の高い情報が欲しい方。
- データに基づいた事実ベースの情報が欲しい方。
ストキャスティクス逆張りは有効です
結論から申しますと、ストキャスティクスの逆張りは有効です。
上記画像は、過去20年間ひたすらストキャスティクスの%Kを使って逆張り手法を行い続けるようにプログラムしてテストした場合の資産推移です。
見ての通り右肩上がりの資産曲線です。
客観的にこの画像を見て、ストキャスティクス逆張りが全くの無意味と言う人は少ないでしょう。
ただし、使う時間足とパラメータによりけりで、全く優位性が無かったストキャスティクスの設定は多いです。
仮にあなたがどこかで見た情報を鵜呑みにし、手法に優位性が無いと知らないまま稼げると信じてトレードし続けた場合どうなるでしょうか?
この記事ではそれぞれの時間足で検証し、期待値が高かったストキャスティクスのパラメータも含めて公開します。
ストキャスティクス逆張りには優位性があります。
ストキャスティクス逆張りの検証方法
ストキャスティクスの%Kが1~30(70~99)を越えたらロングorショート(買いor売り)
エントリー後、反対側の%Kが70~99(1~30)を越えたらしたらクローズ(決済)。
それぞれの時間足、良く使用されるパラメータのストキャスティクスでテストを行い、計336パターンのデータを取ります。
5、9、14の期間のストキャスティクスでそれぞれ1~30(70~99)でエントリー、反対側の70~99(1~30)で決済する組み合わせが16パターン。
これを1分足~日足で行い、計336パターンとなります。
通貨ペアはドル円、期間は2003年6月~2023年11月です。
取引コストは検証用に0.1pips(0.1銭)です。
手法そのものの力だけを見たいため利確損切りは設定しません(一応500pipsで設定)
早速やっていきましょう!
ストキャスティクス逆張りの優位性、検証結果
次項に出てくる棒グラフが検証結果です。
過去20年間のチャートデータをもとに、ストキャスティクス(%K)逆張り手法の期待値(pips)を表したグラフです。
縦軸は期待値(pips)です。勝ち負け平均して1トレード毎に何pips期待できるかを表しています。上側に棒グラフが伸びていれば期待値プラスです。
横軸は、ストキャスティクスの期間です。青色の縦線で区切ってありますが、横軸の数字に近い棒グラフは全て同じ期間のストキャスティクスでの結果です。
最後に棒グラフの色は、エントリーと決済のストキャスティクスの数値を表しています。
「10~70」とあればストキャスティクスの%Kが10を下回ったら買いエントリーして70を上回ったら決済した時の結果を表します。
売りの場合は90を上回ったら売りエントリー、30を下回ったら決済です。
※あまりにもトレード回数が少なかったものは除外しています。
1分足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
こちらは20年間、1分足のストキャスティクス(%K)で逆張りを行い続けた結果です。
期間9と期間14のストキャス(%K)は全て期待値プラス!
全ての棒グラフが上側に伸びています。
対して期間5のストキャス(%K)はほぼ期待値マイナスと壊滅的。
1分足の期間5のストキャス(%K)で逆張りはしないほうが無難でしょう。
1分足で最も期待値が高かった設定の資産推移
ストキャスティクス(%K)逆張り(1分足) | パラメーター |
---|---|
期間 | 14期間 |
%Kの数値(エントリー) | 1 |
%Kの数値(決済) | 80 |
1分足で最も期待値が高かった設定です。
ストキャス(%K)14期間。%Kが1以下でエントリー、80以上で決済した場合の資産推移です。
ガタついているときも多いですがきれいな右肩上がりです。
スキャルピングに使えますね
1分足で、最も期待値が良かったものはストキャス(%K)14期間、%Kが1以下でエントリー、80以上で決済した場合です。
最も悪かったものはストキャス(%K)5期間、%Kが1以下でエントリー、70以上で決済した場合。
※売りは逆
5分足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
こちらは5分足のストキャスティクス(%K)逆張りの結果です。
全体的に期待値プラス!
素晴らしいです。
エントリー時の%Kの条件が緩いと期待値はマイナスになっているものがありますが、全体的に見て申し分ないでしょう。
5分足で最も期待値が高かった設定の資産推移
ストキャスティクス(%K)逆張り(5分足) | パラメーター |
---|---|
期間 | 14期間 |
%Kの数値(エントリー) | 1 |
%Kの数値(決済) | 99 |
5分足で最も期待値が高かった設定です。
ストキャス(%K)14期間。%Kが1以下でエントリー、99以上で決済した(売りは逆)場合の資産推移です。
右肩上がりですね。
5分足で安定感が優れていた設定の資産推移
ストキャスティクス(%K)逆張り(5分足) | パラメーター |
---|---|
期間 | 14期間 |
%Kの数値(エントリー) | 1 |
%Kの数値(決済) | 90 |
期待値ではやや劣るものの安定感が優れていた設定も載せておきます。
素晴らしいですね。
きれいな右肩上がり。そのまんま使えそうです。
安定感のある方が使いやすいです。
5分足で、最も期待値が良かったものはストキャス(%K)14期間、%Kが1以下でエントリー、99以上で決済した場合です。
最も悪かったものははストキャス(%K)期間、%Kが1以下でエントリー、80以上で決済した場合。
※売りは逆
15分足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
15分足のストキャスティクス(%K)も全体的に期待値プラス!
ところどころで期待値マイナスですが、全体的に優位性はあると言えます!
15分足で最も期待値が高かった設定の資産推移
ストキャスティクス(%K)逆張り(15分足) | パラメーター |
---|---|
期間 | 14期間 |
%Kの数値(エントリー) | 1 |
%Kの数値(決済) | 70 |
15分足で最も期待値が高かった設定です。
ストキャス(%K)14期間。%Kが1以下でエントリー、70以上で決済した(売りは逆)場合の資産推移です。
後半停滞していますが、他のテクニカル指標やファンダメンタルとの組み合わせ次第です。
15分足でも有効ですね。
15分足で、最も期待値が良かったものはストキャス(%K)14期間、%Kが1以下でエントリー、70以上で決済した場合です。
最も悪かったものははストキャス(%K)期間9、%Kが1以下でエントリー、99以上で決済した場合。
※売りは逆
30分足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
こちらは30分足のストキャスティクス(%K)逆張りの結果です。
5、9期間では優位性があるように見えます。
14期間ではかろうじてエントリー時の%Kの値が小さいときに期待値がプラスです。
30分足で最も期待値が高かった設定の資産推移
ストキャスティクス(%K)逆張り(30分足) | パラメーター |
---|---|
期間 | 5期間 |
%Kの数値(エントリー) | 1 |
%Kの数値(決済) | 80 |
30分足で最も期待値が高かった設定です。
ストキャス(%K)5期間。%Kが1以下でエントリー、80以上で決済した(売りは逆)場合の資産推移です。
30分足では後半調子が良いですね。
30分足で、最も期待値が良かったものはストキャス(%K)5期間、%Kが1以下でエントリー、80以上で決済した場合です。
最も悪かったものははストキャス(%K)期間14、%Kが30以下でエントリー、99以上で決済した場合。
※売りは逆
1時間足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
こちらは1時間足のストキャスティクス(%K)逆張りの結果です。
5期間のストキャス(%K)では全体的に期待値がプラス!
9、14期間では壊滅です(笑)
優位性が落ちてきましたね。
1時間足で最も期待値が高かった設定の資産推移
ストキャスティクス(%K)逆張り(1時間足) | パラメーター |
---|---|
期間 | 5期間 |
%Kの数値(エントリー) | 1 |
%Kの数値(決済) | 70 |
1時間足で最も期待値が高かった設定です。
ストキャス(%K)5期間。%Kが1以下でエントリー、70以上で決済した(売りは逆)場合の資産推移です。
微妙ですね。
優位性が無くはなさそうにも見えますが安定性は皆無です。
少なくとも単品では使えません。
1時間足で、最も期待値が良かったものはストキャス(%K)5期間、%Kが1以下でエントリー、70以上で決済した場合です。
最も悪かったものははストキャス(%K)期間14、%Kが10以下でエントリー、90以上で決済した場合。
※売りは逆
4時間足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
壊滅的です。
有効とはとても思えません。
期待値がプラスになっている組み合わせはゼロです。
ひどい組み合わせは期待値マイナス65pips強。仮に一般的な単位1ロット(1万通貨)で月に10回トレードしただけで年に110万円弱程度の損失を叩き出す数字です。1日1回なら220万弱の損失となります。(1ドル140円で計算)
このパラメータでトレードするくらいならギャンブルに突っ込んだ方がましかもしれません!(笑)
4時間足で、期待値がプラスだったものは無し。
最も悪かったものはストキャス(%K)期間9、%Kが30以下でエントリー、99以上で決済した場合。
日足における各ストキャスティクス(%K)逆張りの期待値
4時間足同様、壊滅的。
期待値がプラスの組み合わせは一つもありませんでした。
有効とはとても思えません。
ひどいものは期待値マイナス約202pips。これはは月に一般的な単位1ロット(1万通貨)で月にたった2回トレードしただけで年に68万円弱の損失を叩き出す数字です。月3回なら102万弱、月5回なら170万円弱の損失となります。(1ドル140円で計算)
お話になりません。
日足で、最も期待値がプラスだったものは無し。
最も悪かったものはストキャス(%K)期間5、%Kが1以下でエントリー、99以上で決済した場合。
ストキャスティクス(%K)逆張りは短中期足で有効
ストキャスティクス(%K)逆張りの手法は1分足~1時間足で有効。
検証の結果、ストキャスティクス(%K)逆張りは有効な戦略であることが分かりました。
ただし、4時間足で以降はあまり優位性は見られませんでした。
短期足では安定感抜群でしたね。
ストキャス(%K)逆張りの設定表
表にもしてみました。
期待値がプラスだったものが「〇」。
最大の期待値だったペアが「〇の赤色」のマス。
空欄のマスが期待値マイナス。
最小の期待値だったものが「×の青色」のマスです。
自分の良く使う設定と表とを見比べてみてください。
「1分足」ストキャス(%K)逆張りの設定表
1分足 | 5 | 9 | 14 |
---|---|---|---|
1-70 | |||
1-80 | |||
1-90 | |||
1-99 | |||
10-70 | |||
10-80 | |||
10-90 | |||
10-99 | |||
20-70 | |||
20-80 | |||
20-90 | |||
20-99 | |||
30-70 | |||
30-80 | |||
30-90 | |||
30-99 |
「5分足」ストキャス(%K)逆張りの設定表
5分足 | 5 | 9 | 14 |
---|---|---|---|
1-70 | |||
1-80 | |||
1-90 | |||
1-99 | |||
10-70 | |||
10-80 | |||
10-90 | |||
10-99 | |||
20-70 | |||
20-80 | |||
20-90 | |||
20-99 | |||
30-70 | |||
30-80 | |||
30-90 | |||
30-99 |
「15分足」ストキャス(%K)逆張りの設定表
15分足 | 5 | 9 | 14 |
---|---|---|---|
1-70 | |||
1-80 | |||
1-90 | |||
1-99 | |||
10-70 | |||
10-80 | |||
10-90 | |||
10-99 | |||
20-70 | |||
20-80 | |||
20-90 | |||
20-99 | |||
30-70 | |||
30-80 | |||
30-90 | |||
30-99 |
「30分足」ストキャス(%K)逆張りの設定表
30分足 | 5 | 9 | 14 |
---|---|---|---|
1-70 | |||
1-80 | |||
1-90 | |||
1-99 | |||
10-70 | |||
10-80 | |||
10-90 | |||
10-99 | |||
20-70 | |||
20-80 | |||
20-90 | |||
20-99 | |||
30-70 | |||
30-80 | |||
30-90 | |||
30-99 |
「1時間足」ストキャス(%K)逆張りの設定表
1時間足 | 5 | 9 | 14 |
---|---|---|---|
1-70 | |||
1-80 | |||
1-90 | |||
1-99 | |||
10-70 | |||
10-80 | |||
10-90 | |||
10-99 | |||
20-70 | |||
20-80 | |||
20-90 | |||
20-99 | |||
30-70 | |||
30-80 | |||
30-90 | |||
30-99 |
まとめ:ストキャス(%K)逆張りは有効な手法です。
今回のおさらいです。
ストキャス(%K)逆張りは有効な戦略。
・1分足~1時間足等で有効。
・4時間足以降ではあまり優位性は見られない。
いかがでしたか?
ストキャスティクス(%K)逆張りを検証してみました。
結果、手法の優位性が確認できました。
次回はスローストキャスティクス(%D,%SD)で逆張りの検証をします。
期待値が大きい組み合わせでエントリーを狙ったり、逆に期待値マイナスの組み合わせが起きていないか確認してみるとトレードの質向上につながると思います。